中川: 今年も稲刈り作業お疲れさまでした。特別栽培に切り替えて、今年5年目の秋津穂の出来はどうですか?
杉浦: とても良く出来ていると思います。
5年目にして最高収量になると思いますし、ボランティアの皆さんに草もすごく綺麗に取って頂いて、
堆肥の量は変えてはいないのですが、土が良くなってきたのか、地力が高まってきたのか、
お米の出来自体も良くなってきています。
中川: 5年間の土づくりや除草作業の積み重ねが実り始めたという事でしょうか。
杉浦: と思いますね。有機農法に転換して土の状態が変わってくるのは、
3年から4年程かかると言われています。今年5年目にしてやはり効果が表れてきているのかなと思います。
中川: 私も毎年除草作業に参加させて頂いているのですが、雑草の生える量が年々少なくなっているように感じます。
杉浦: 去年ごろからその傾向が出てきていて、今年は特に少ないですね。
中川: 毎年のボランティアの皆さんの除草作業のご協力や、杉浦さんの土づくりへの努力の
積み重ねが実際に結果として現れ始めているというのは、自分自身とても嬉しいです。
杉浦: そうですね。5年間、あっという間でしたが、秋津穂の里のイベントを始めて本当に良かったなと思います。
中川: 今年は、ずっと今までからも調べたいと思っていたのですが、杉浦さんが特別栽培米を栽培されている圃場の土と収穫された玄米の分析を行いました。
というのも、杉浦さんのお米で過去4年間酒造りをしてきて、全て低精白でお酒造りをしてきたのですが、
一番の違いは出来上がったお酒の味わいの透明感が高く、実際アミノ酸の数値が低いことです。
秋津穂の米で造った酒は、苦味があることが特徴となっていますが、杉浦さんの栽培された米では苦味が少なく感じます。
推測にはなるのですが、作っていただいているお米は有機農法で化学肥料が使われておらず、
窒素源が少ないのではないかと考えています。窒素源が少ない土壌で育てられた事で、
育ったお米のタンパク質の量が少なくなり、そのお米で造ったお酒のアミノ酸の量が
少なくなることに関係しているではないかと考えています。
杉浦: それはずっと仰ってましたね。
中川: それで、今年初めて実際に杉浦さんの特別栽培米の秋津穂の圃場と、同じ御所市内の慣行農法の圃場で、土と玄米の成分の分析をさせて頂きました。
まだ土の窒素の量と玄米の成分はこれからなのですが、土中のミネラルの量を見ると、
想像だと化学肥料が使われている慣行農法の土の方より少ないのではないかと思っていたのですが、あまり変わらずに、
むしろ慣行農法の圃場よりも豊富な成分もあり、驚きました。
杉浦: 有機農法はやはり転換した最初は、野菜でも収量が少ないようなのです。
私は肥料として堆肥を使うのですが、慣行農法だと作業に手間がかかるため、堆肥を使う農家はほとんどありません。
化学肥料を使えば、とりあえずは必要な栄養素を与えることが出来るのです。
ですが、土のそのものの肥沃度や土づくりというところは出来ていない場合があります。
我々の有機農法の場合は濃厚な肥料を与えることが出来ない為に、土づくりが重要になってきます。
中川: 「土を育てる」ことが必要ということですね。
杉浦: そうなんです。そして、その結果が出てくるのが3〜4年と言われています。
中川: では、今まさに結果が出てきていると。
杉浦: だんだんと良くなってくれば、自然農法とまでは行かなくても、地力だけでお米が取れるようになると言われています。
中川: 自然農法というのは、全く肥料を使わないという方法ですか?
杉浦: そうです。この辺りでは、昔から言われてることですが、「米は地力で採れ。麦は肥料で採れ。」ということがずっと言われています。
中川: 米は土そのものの栄養素があれば十分ということですね。
杉浦: はい。麦は肥料を与えなければ良い麦にならない。米は地力だけでもよく育つ、つまり地力の大切さを説いているのだと思います。
この土地は山からの水も十分でミネラルも豊富ですし、土壌が花こう岩の砂地なので、そこにもミネラルが十分含まれています。
中川: なるほど。やはり、その土地のパワーを十分に活かすことが大事なんですね。
また、それが去年辺りから実ってきたという事ですね。
杉浦: そうです。なかなかそこまで我慢をして、有機農法で作り続けるのは難しいんですよね。
収量も少なくなってしまうので。ですので、私もボランティアイベントを行っているから続けられているといっても過言ではありません。
中川: 見守って、協力して頂けるボランティアさんの存在が杉浦さんにとって大きな存在なのですね。
杉浦: そうです。背中を押されてここまで来れたと思います。