杉浦: 普段から山本さんに中山間地の農業の話をいろいろとしてたんです。
今危機に瀕していて、将来的に続けていくことが厳しい状況にあると。
山本: もともと風の森のために特別栽培の酒米を作ってもらってたんですけど、
お話を聞くまでそこまで大変だとは知らなかったんです。
田んぼも見せてもらって、これは予想以上に大変だと気づいて。
それで、農家さんにしっかり利益を還元できるシステムが必要だと思ったんです。
杉浦: ただ価格を上げればいいかというと、それはまた難しい。
そこでいろいろと話すうちに出てきたんですよね。
山本: 農家さんに酒屋さんをやってもらえればいいんじゃないかと。
そうすれば、農業の維持に必要な現金収入が増えるのではと考えました。
それに、自分が作ったお米だけで作られたお酒なら、
私の田んぼからできたお酒ですって、胸を張って売れますし。
杉浦: 面白いですよね、目から鱗でした。でも、酒屋さんに遠慮もありました。
実は4年前から、油長酒造のお酒を扱ってる酒屋さんにボランティアで米作りを手伝ってもらってるんですよ。
もしかしたらお世話になってる酒屋さんと競合することになるんじゃないかとか。
山本: それは僕も懸念していたので、奈良でお世話になってる酒屋さん1軒1軒とお話をしたんです。
そうしたら、もともと米作りのお手伝いなどを通して杉浦さんと面識があったこともあって、
「杉浦さんだったら」と、賛成してもらえました。ぜひ一緒にやっていきましょうと。
杉浦: うれしかったですね。
山本: 棚田の維持は全国的な問題ですし、酒蔵も日本全国にあるので、
このシステムがうまくいけば日本の里山と農家さんのお役に立てるんじゃないかと思うんです。
杉浦: 棚田がなくなると、里山の自然が荒れるんです。田んぼはダムとしての効果もあって、
水害を抑えているという側面もあるんですよね。
棚田を維持しながら里山の自然を守るためには、安定した収入が必要です。
棚田の環境につながる山の維持にもお金が必要ですし、来年のための投資も必要ですからね。
それにきちんと収入がある、そして収入を増やすことができるとなれば、農家の後継者問題の解決につながるかもしれません。
山本: そもそも杉浦さんはどうしてここで農業を始めたんですか?
杉浦: 大学は農学部だったんですけど、建設会社に就職して、ダム周辺の緑化に携わっていたんです。
その中で、ダムを作る際に伐採した木を原料に堆肥を作って、
農家さんに試験的に使ってもらうという仕事がありまして、その時に農家さんの現状を改めて知って、
やっぱり農業をなんとかしなければと思って仕事を辞めて農業をはじめました。
ちょうど知り合いが御所で畑をやっていたので、紹介してもらってここに来ました。
山本: そうだったんですね。
杉浦: はじめはレタス作ってましたね。3、4年目になると、近所の方が田んぼを貸してくれるようになって。
山本: 高齢化が進んで、自分で田んぼを続けられない人が増えてるんです。
杉浦: 棚田は、田んぼひとつひとつが狭いんです。田んぼは今60枚以上あるんですけど、
広さでいうと合わせて2.5haぐらい。1枚あたりにすると、平地の田んぼより断然狭い。
それに平地なら機械も入れやすいので作業効率も生産性も高いんですが、
棚田は斜面なので投入する労力が格段に大きくなります。さらに土手の維持や、
棚田につながる山の維持などの作業やコストが発生するので、効率も生産性も悪いんです。
山本: それでも棚田で農業をする理由はなんですか?
杉浦: 農家の方が代々続けてこられた米作りや山の維持が、里山の自然と風景を守ってたんですけど、
それができる方が減っていることに危機感を覚えていて。
棚田のあるエリアって、生物の多様性が豊かなんです。だから棚田が失われるということは、
その多様性が失われるということなんです。ここで農業を続けて、
里山の自然を守りたいという気持ちが農業を始めてから芽生えましたね。
山本: だから地元の人にも受け入れられたんですね。田んぼを貸してくれている方との交流はありますか?
杉浦:おかずを持ってきてくれたりしますね。
田んぼやってくれてありがとうって。応援していただいてます。
・秋津穂 杉浦の特別栽培米(720ml、1本)
・秋津穂 杉浦の特別栽培米 真中採り(720ml、1本)
・秋津穂 特別栽培米 酒粕(500g)
・秋津穂 特別栽培米 白米(2合)
・リーフレット
5,940円(税込)
私、杉浦と沢山のボランティアの皆様で育てた特別栽培米の秋津穂を、
油長酒造さんによってその魅力を低精白で余すことなく最大限に表現。
1月下旬ごろに特別栽培米秋津穂の酒粕と白米をセットにしてお届けします。
お米の生産記録を記したリーフレット付きです。